ちかば散歩④ 小冊子『アースオーブン』を読んで・・・
蟻谷佐平 (編集員)
2012/07/03記
焚き木を燃やして炎の周りに近づき仲間と集うのは、人のみに備わった習性で、他の生き物にみられない行動でしょうね。下北半島の温泉に浸るニホンザルの群れのニュースはたびたび報道されます。ですが、その賢いサルが炎を囲んで暖をとったり憩うのは、およそ見たことがありません。
焚き火の周りに居れば、外敵から身を守れると云う祖先の記憶から、一族の安心を具現化した場所が炎の周り、集い憩う場所に・・・・なったのかな、と。家屋のなかの囲炉裏も、家族の団らんの場に客人のもてなしの場に、ときに長の教えの場にと、単に炊事、食事をする以上の場と想うのですが、(うちは囲炉裏を設けていないので)走り過ぎた想いかも知れません。
さて、何故このようなことを記したかと云うと、じつはアメリカ在住の知人から絵本のような素敵な小冊子が届いたことによります。
『アースオーブン -ステップ バイ ステップで学ぶアース オーブンの作り方』と云うテキスト本です。炎を燃やす手づくりの釜の写真が黒い表紙の左半分を飾ります。そしてなかをひらくと、この釜の制作過程の順に、写真と添え文が的確に配置されています。この写真と図に示した構造をみるだけでも、容易に制作方法が解ります。そして添え文によって、より理解を深めることが出来ます。制作方法に加え、制作の意図、想いがやさしく記してあり、著者とその仲間との喜びまで伝わってきます。
この絵本のような小冊子は最初、英語版でした。それが日本語版になって日本まで届きました。たぶん著者は、人ならではの普遍的な炎の周りに集う習性、すなわち『アースオーブン』と云う制作を通して具現化した「仲間との喜び」をも報せたかったに違いないでしょう。そのような仕合せに包まれた本文の、的確なマニュアルに沿って、たぶん思わず作りたくなる衝動が起きるでことしょう。
(記・佐平)
■付記
制作に用いる道具は簡素に数種類ですが、そのなかに日本の左官鏝が混ざっています。
何故でしょう? 不思議でしょ? どんな鏝かな? ・・・・!! そのヒントは著者とその仲間が開く「『土』のワークショップ」に日本の左官屋さんも参加してきた、いわく『土』の国際交流ですね。これまでにコンフォルト『土と左官の本』編集のアイシオール多田さん、世界の自然素材の建物を撮っている写真家小松義夫さんご夫妻、月刊誌「左官教室」「さかん」元編集長小林澄夫さん、そして左官親方挾土修平さん等が参加してきました。
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