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ちかば散歩⑤ 土佐漆喰のワラの効用(発酵)について

蟻谷佐平 (編集員)

2012/06/23記


人間は尻尾を振り過ぎてちぎれ、尻尾のない動物になったと云う。
尾てい骨にそのなごりはあるものの、尻尾がないからといって歩行バランスを崩すわけでもないし・・・・・。

興味を抱きながら数年わからないことってありますよね。
PCやスマホでネットサーフィンして調べることで用を成すこともできます。
ですが、痒いところに手が届かない思いが残ることもありますよね。

土佐漆喰の藁スサの効用について、製造元の田中石灰工業㈱さんに尋ねました。
尻尾を振ったから教えていただいた・・・そんな事はありません。
研究室の方から簡潔丁寧に教わりました。


いわく、
土佐漆喰はご存知のように、藁スサを加えて(長い時間をかけて)発酵熟成させます。その発酵成分はリグニンという多糖類です。
ワラはセルロースとヘミセルロースからなる繊維質と、細胞壁同士の接着の役目をするリグニンという糖類で構成されています。ワラを醗酵させると、ヘミセルロースが最初に分解されリグニンが遊離し、セルロースは残留します。
セルロースは繊維としてスサの役目を果たし、遊離浸出したリグニンは、その物理的性質から、漆喰に接着力の付与と、塗物性の向上をもたらします。
膨潤性の高い海藻糊と異なり乾燥時に糊の容積減による空隙の発生が殆どありませんので、土佐漆喰を厚塗りしても、割れにくいという特性を発揮します。

また、硬化後、雨にあたっても溶脱して空隙が発生することもないので、非常に耐久性の強い壁になります。
しかし、リグニンは濃褐色物質なので、土佐漆喰は塗り付け当初はどうしても茶色がかった色をしています。
この色は日光に曝されることによって、リグニンが二酸化炭素と水に分解されることにより、徐々に白さを増して来ます。この時に発生する水と二酸化炭素は壁内部からの石灰化を促し、より、土佐漆喰の壁を堅固なものにしていきます。
また、どうしても海藻糊ほどの強い付着性はないので、厚塗り施工しないといけません。


なるほど、ありがとうございました。“ちかば”の興味について散歩してみました。


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