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パネルディスカッション「土の家」  土の施工方法

久住 章


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(写真家:日暮雄一氏と久住章)

2010年3月27日(土)に開催された「NPO法人緑の家学校」基調講演会(共催:左官的塾)パネルディスカッション「土の家」での久住章の講演レジメを掲載いたします。(当日使用した画像も抜粋しました)


■木舞下地
・木の柱に細い木の枝(ヨーロッパでは柳の枝)や葦、茅、籐、丸竹、割竹などを、籠状もしくは縄で編み、壁下地をつくる。


■荒壁
・上記の下地に塗る粘土に、米藁、麦藁、木の葉など、繊維状のすさを混入し、手もしくは木鏝、金属鏝で塗る。


■練り土積み
・荒壁よりも少ない水分(半分以下)で練り上げた土(採取する場所によっては含水率の程度により、採取されたままの状態)を、型枠なしに水平にすこしずつ積み上げて壁をつくる。
・粘土に砂、砂利、藁を練りこみ、く練った土を型枠なしで下部から積み上げる(壁厚1m~30cm)。
・イギリス南部では大量の麦藁を粘土に混入し、トラクターで踏みつぶし干し草専用のフォークで600mm高さに土を積み上げ、足で踏みつぶし人間の重量で圧縮しながら壁を積み上げるコブ(COB)の技法がある。この工法で500年の寿命がある。壁厚は2階建ての基礎部で1m、上部で70cmである。壁の表面は土が柔らかいうちにシャベルで削ったり棒で叩きながら成形する。これは壁下地になる。上塗には漆喰が使われている。屋根部は茅葺である。
・上記の材料には麦藁、枯れ草などが混入されるが、乾燥に時間がかかるため米藁は使えない。米藁は腐敗が早く粘土の固結を阻害する。日本のように薄い壁では乾燥が速いため米藁を使用しても問題はない。
・兵庫県篠山市、山口県豊浦町、山口県防府市、大分県宇佐八幡などで見られる。

PD03練り土積み.jpg練り土積みPD04イギリス練り土積み.jpgイギリス練り土積みPD08ジェンネ0.jpgジェンネPD09ジェンネ1.jpgジェンネPD12ジェンネ4.jpgジェンネPD13豊浦練り土積み.jpg豊浦練り土積みPD14東大寺練り土積み.jpg東大寺練り土積みPD15瓦と練り土.jpg瓦と練り土

■葉巻き型粘土ロール
・ロールケーキを大きくした形で、中央に木の枝か棒を突き刺す(両端は木が飛び出している)。木造の柱を固定しながら半生(はんなま)で積み上げる。
・枕型に成形した粘土を、土モルタルで積み上げる。薄いパン型では土モルタルなしの場合もあった。


■土団子
・少ない水分で粘土を練り、手で団子状、パン型などをつくり、土モルタルで積み上げる。半生で積むと変形して目地が薄くなるので強度は出るが、長時間つくり置きができない。
・乾燥地帯では水が確保できる時期にできるだけ団子やレンガをつくる。団子やレンガをつくるのに必要な水分より、積み上げる時に必要な目地用モルタルは少ない水分で済むため、水量限界の季節に合わせて土団子をつくり、建築と別個に集中させる場合もある。
・乾燥させた土団子は、目地部分の接着用土モルタルが厚くなる。この厚さに合わせて収縮しないように砂を混入するため、土の強度が下がり、巨大な建物には使用されなくなる。
・型枠の普及とともにこの工法は消えていくが、最も簡単な方法として小住宅などは今でも行なわれている。日本でも50年前までつくられていた。山口県豊浦町、兵庫県篠山市、奈良県山辺の道、東大寺周辺、京都府花背、京都府周山周辺で見られる。

PD16日干し団子.jpg日干し団子PD17日干し団子積み.jpg日干し団子積み

■日干しレンガ(手による成形)
・古代において型枠は使用されず、手のみで成形していた。少ない水分で粘土を練り、土間や石の上でトントンと当てながら成形したり、木で叩きながら成形する。団子に比べて規則正しい形がつくれる。乾燥させて積むが、半生(はんなま)で積むこともあった。


■日干しレンガ(型枠成形)
・紀元前5000年頃出現するが、殆どの地域では製材技術が発達するまで手のみで成形されていた。古代中央アメリカでは葦を動物の皮ひもで結び型枠をつくっていた。
・基本的に乾燥した土レンガを土モルタルで積み上げる。アーチ、ボールト、ドームなどの複雑な形をつくるための日干しレンガはペルシャ型で、現在の市販レンガの大きさと同じで210x100x60mmである。また小さい日干しレンガは、施工時瞬間的に水に浸しながら薄い目地で積み上げる。土の目地材は粘い土を薄く施工することにより強度が上がる。この方法により型枠なしでボールトやドームをつくることができる。
・単純な形の建物ほど日干しレンガは大きくなる(一般的な住居はデザインよりも強度と作業効率が優先される)。
・大きな日干しレンガは自重のため、型枠は簡単に上部に抜けるが、小さなものは粘土を柔らかく練り(日本の荒土程度の含水率)型枠に入れる。天端を均してすぐに抜く。この時型がすぐ崩れるようでは含水率が高すぎる。型枠は一回ごとに水に浸し(清掃の必要はない)、あらかじめ地面に少し砂を撒き(土レンガを乾燥させるために半生状態のものを移動する時、地面にくっつかないようにするため)、円上に水に浸した型枠を置き、土を入れる。この繰り返しにより一日に多数つくることができる。
・土の中に切り藁や草を混入するが、粘度に合わせて加減する。ベントナイト、カオリンなど極度に粘いものは、繊維だけでなく砂も混入する必要がある。日干しレンガに向いた粘土がある。また石灰モルタルでも日干しレンガが積まれている。
・日干しレンガの土塀は、奈良の東大寺周辺の土塀などに見られる。

PD18土半生板.jpg土半生板

■土ブロック
・共通して15Kg以上それ以下は土レンガ。
・古代期に早く普及した工法である。古代の方法は、重い石の平面部を内に向け、四方に置き、少ない水で(手づくり日干しレンガ用粘土の含水率くらい)練った土を中に入れ搗きながら成形する。形ができるとすぐ石を外す。この時形が崩れない土が良いが、版築のように含水率が低いと固結力が弱く、構造的に弱くなる。版築向きの含水率では日干しレンガの移動ができない。
・大きな日干しレンガは、土モルタルなしで自重で積み上げられた。その形状は移動、運搬、積み上げの作業効率に合わせてつくられ、乾燥後または半生で積み上げられた。大きな土ブロックは完全に乾燥するには日数がかかるため、土モルタルによる接着剤は水平部分のみで、竪目地には使用しないことが多い。
・アフリカのマリ、イタリアのサルディニア島、アメリカのサンタフェなどの地域が離れていても同じ現象が見られる。この土ブロック工法は近畿地方の土塀などにも見られる。

PD19日干しブロック.jpg日干しブロック

■土モルタルによる石積み
・土壌から掘り出した石を、その土壌の粘土のモルタルによって積み上げた。もしくは石と粘土は別の場所で採取され、同じように施工する。この工法による石積み建築は古代から続き、現代にも行なわれている。
・小さな小屋から塀、住居や壁まで、様々に利用され、雨の多い地域では漆喰によって目地が化粧塗りされたり、全面に漆喰が塗られることがある。イタリア、ポンペイの住宅やフランスの住宅などでも多く見られ、世界中に分布する。日本でも小さな小屋や土塀などに見られる。


■版築
・土の建築においては最も新しい工法である。版築は底辺の広い基礎工事や基壇から始まった。表面には型枠は使用されず、厚さ10mを超える城壁や累壁、墳墓など巨大な建造物を早く堅固につくる工法であった。
・地震のない地域では、創造壁として徐々に薄くつくる技術が発達し、各地によって型枠の形状や搗き固める道具や技法に違いがある。基本的に共通していることは、採取した土は加工せず、その含水状態で叩き締めたり搗き固められる。土の粒度分布においては日本の土壁中塗り材くらいで、それより粘い土は薄い層に繰り返して施工される。粘度の高い土は使用しない。なぜなら大量の土を必要とするため、搗き固める手間より混練りする手間がかかる為である。

PD06フランス版築.jpgフランス版築PD20版築漆喰目地.jpg版築漆喰目地PD21法隆寺土塀.jpg法隆寺土塀PD22太閤壁.jpg太閤壁PD23御所.jpg御所

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