荒壁講習会

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荒壁講習会報告


平成20年8月10日(日)、17日(日)の2日間にわたり、東京都立城東職業能力開発センター足立校で、東京都左官職組合連合会主催の「荒壁講習会」が開催されました。2月に開催された木舞講習会で完成した木舞に、実際に荒壁を塗り付ける講習会です。

10日の講師は久住章さんで、実習のあと、急遽講義をしてくれました。17日の講師は上野弐詔さん、斎藤剛司さん、横山伸吾さん。受講者は約30名で、参加した左官屋さんたちは泥まみれで材料づくりや荒壁塗り、木舞のかき直しに汗を流していました。見学者として建築関連の学生たちの参加もあり、熱心にメモを取る人もいて、東京ではあまり見られなくなってしまった伝統工法-荒壁に対する関心の高さがうかがえる2日間でした。

荒壁は木舞同様、各地方や職人さんにより材料の作り方や塗り方が異なるものですが、今回の講習会での実習を参考にして、左官職人が各自で工夫してよりよい荒壁を塗ってほしいとの久住さんからの言葉が印象的でした。



■実習-材料作り

荒壁を塗ったあとのひび割れを防ぐため、肝心要の工程です。

今回使用する土は富沢建材さんに準備していただいた埼玉県深谷の荒木田土。手作りの大きな目のふるいでふるって、土の大きな固まりを除きます。大きな固まりはスコップなどで砕いてから、またふるいます。

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(大活躍のふるい)

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(砕くのも大変!)

ふるった土に水、砂の量を調整しながら加えて混ぜて、ミキサーでこねます。今回の荒木田土では容量比で土:砂=1:1。水の量は、講師やベテランの人たちが「これくらいかな」と様子をみながら調整しています。

一方で、土に混ぜるワラスサを「押し切り」という道具で切ります。刈り取った状態のワラを長さ5~6cmくらいにそろえて切っていくのですが、久住さんが「こうやるんや」と手本として見せてくれた切り方の早いこと! ザクザクザクザクッと目にも留まらぬ早業で、一瞬でワラスサの山ができていきます。押し切りを見るのもワラを切るのも初めてという若い人たちは、真似しようたって、すぐにできるはずもなく、一心不乱に“格闘”していました。同時に、貫に伏せ込む長さ20~30cmくらいのカキワラも切って、すぐに使えるよう、束ねておきます。

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(これが押し切り)

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(切ったワラがてんこもり)

ミキサーで混ぜた材料を、今度は地面の上にまとめ、ワラスサを上から加え、さらにこねて練ります。久住さんが「もっと持ってきてや」と呼びかけ、大量のワラスサをがんがん放っていきます。今回の荒木田土(土:砂=1:1)には容量比で土/砂:ワラスサ=1:1~1.5くらいの量。

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(ワラをドバッと)

ここからが人海戦術。大勢がクワを手に、練り込みます。均等にワラが混ざるよう、「表面をならすんやなく、下から混ぜるんや」と久住さん。かなりの力仕事で、少し風のある日とはいえ、真夏の空の下、みなさん汗だくに。

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(練り込みは体力勝負)



■実習-塗り付け

できた材料を鏝板の上に乗せ、木舞の表に塗り付けていきます。上のほうの壁を塗る場合は、下にいる人が「土さし」や「さいとり棒」に材料をのせて、塗る人に渡すのですが、慣れないとなかなか……。受け取るときは、すくい取るような感じで鏝板に材料を移します。さいとり棒が届かない位置に塗る人がいる場合は、下にいる人が土さしを使い、ひょいと放る。材料が空中を一直線に飛び、鏝板で受ける……そうなるはずが、この加減が難しく、最初のうちは材料が届かずに途中で落下したり、鏝板を持って待ち構えている受け手の体に勢い余ってブチあたったり。笑い声があちこちで聞かれましたが、何度か試すうちに、みなさんすっかりコツを覚えていました。

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(慣れないうちはへっぴり腰に)

さて、塗り付けかた。受け取った材料をぶつける感じで。鏝を上から下へと動かし、押さえ込みます。あまり力を入れすぎると木舞の裏側から材料がはみ出て下に落ちてしまうので、加減しながら行います。

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(下から上でなく、上から下へ)

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(手で塗り付けることもできる)

貫の箇所はあとからすぐにわかるように、鏝で印を付けておき、一面の塗り付けが終わったら、その印のところに、カキワラを伏せ込みます。久住さんが手本を示してくれたのですが、片手でカキワラを持ち、貫のところに持っていくと同時に、鏝でカキワラの先端部分を押さえて荒壁に食い込ませ、次に鏝を左右に動かして伏せ込む……貫に沿って同じ動作を繰り返す……こう書くと多少は時間がかかるように思えるでしょうが、これも早いこと早いこと!

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(まずは端を押さえて)

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(一気に伏せ込む!)

全体を鏝でならしたところで表は塗り終わり。次に裏から「裏返し」を行います。裏側にぽっこりぽっこりと出た材料を鏝でならしていきます。貫のところには、表と同様、カキワラを伏せ込みます。

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(あまり力を入れずに)

表も裏も、チリをきれいに掃除して、講習会は無事終了しました。あとは、大直し、中塗りを行い、10月27日に木造壁耐力と壁倍率テスト、静的せん断試験を行う予定です。

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(ワラが出ていて味のある荒壁)

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(17日のために、材料は練り置き。土手に水をはって「泥のプール」のできあがり。)

(文 鬼久保妙子)

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