原田左官投稿1

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詩を朗読するための家

(有)原田左官工業所  中島文夫・大橋和彰・原田宗亮



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先日、変わった形の家を施工した。壁がR状に曲線を描き、天井と床を繋げている。プランの段階から内部の左官仕上げに対して設計者からご相談を頂いて、形は知っていたが、実物を見て、改めて驚いた。ガーデンデザイナーでもある設計・元請の斉藤氏のこだわりで、外から見たときに、「緑化している屋根の建物」という風には見せたくなく、そのために壁・屋根部分の緑を庭と繋がる形にしたため、このような形になったそうだ。

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内部は、その形を生かして床・壁・天井全て同じ素材の左官仕上げにしたいという意向を元に、土佐漆喰仕上げに決定した。壁・天井・床共にクラックをできるだけ避けるため、ガラスメッシュを伏せ込んだ。土佐漆喰仕上げはやはり思っていたように苦労をした。天井から壁・壁から突き出ているベンチの下までは一気に仕上げなければならず、ベンチの下の壁は床にへばりついての体勢で仕上げた。

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内部を土佐漆喰にした理由はもう一つあり、設計の斉藤氏が「繭に包まれている」内装にしたかったからだ。天井・壁・床をやわらかい土佐漆喰の色で一体にすることで「包まれている」感覚を体感できる家にしたいという考えだった。苦労の甲斐があって仕上がった土佐漆喰に関しては我々もしっかりとした施工ができ、施主も設計者にも満足していただいた。

ちなみに、この家の娘さんの名前は偶然にも「まゆ」ちゃんだった。設計者も後から聞いた話で、私もこの偶然を気に入っている。

施工中、施主に聞いたが、この家は詩を朗読するために建てた家だそうだ。今でもその家の近くを通ると思う。繭に包まれて詩を読むのはどんな気分なのだろうか?

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