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ちかば散歩⑪ 寸話 イタリア磨きとコテのキズ手入れ  

蟻谷佐平 (編集員)

2013/04/08記



『イタリア磨き』を或る百貨店の内壁改装仕上げした時の寸話になります。百貨店はじめ商業的店舗の工事は、いつも工期が短いのが相場ですね。そして作業時間も営業の終わった後から始業前の夜間作業も多いですね。その制約された期間内で作業量の大きな『イタリア磨き』をこなすのに、ある工夫を凝らしました。


普通、イタリア磨きは伝統的な四角い専用ヘラ、あるいはパテヘラを用いていました。工夫の第一はその道具の変更でした。左官角ゴテの類いに「先丸ゴテ」って、剣先の丸いのがありますよね。この「先丸ゴテ」の薄刃16~7㎝を用いて、試し塗り、見本壁作りをしました。その見本壁は当然ヘラによる仕上げとは違った表現(テクスチャー)になります。でも、ヘラの作業量の何倍かはかどる分、職人手配が小人数で済みます。そして小人数ですから技術を標準化しやすく、表現を揃えやすい利点もあります。


施主側のデザイン管理者の許可を経て、見本通りの壁仕上げ(コテによる仕上げ)を実践する契約が整いました。イタリア磨きは特徴的な色ムラが命、磨きのなかに反映されます。工夫の第二はコテ道具を均一、均質にすることでした。その結果、同一社製の先丸コテの寸法、厚みを揃えたのです。コテの動かし方、あしらい方をできるだけ標準化すれば、職人の息も揃ってきます。


イタリア磨きは顔が映るように光らせます。その為に割合強いコテ圧(力)を掛けて仕上げます。コテの刃の微細なキズはもろに仕上げ壁に筋状のキズ色を残します。壁面のちょっとしたキズも目立ちます。工夫の第三はコテの管理になります。コテの刃のキズ検査は日常的には用いる職人で十分かもしれません。ですけど、ここはやはり施工責任者の検査は心おきなくしたいものです。なにせ、施工単価は高額ですし、部分補修も難しく、較べてコテの刃のキズ検査も刃を研ぐのも容易だからです。


コテのキズ手入れ.jpg


コテの刃のキズ検査は容易です。工夫の第四はその検査の仕方です。コテはもともと薄刃でコテ圧掛けて仕上げているおかげで、鋭い刃のようになっています。したがって、指の腹で触って確かめれば、時に皮膚を切ることだってあります。また、微細なキズは意外と分かりにくいものです。一番敏感でケガする心配のない方法は、小指を伸ばしてその先の爪でスッと刃に触れて検査することです。どんな微細な刃のキズも爪に反応してビリッとします。キズを感じたらすぐに研いで、ビリッとしなければ完了です。


老婆心になりますが、新品のコテはシャーリング(切断)痕が残っている時があります。特にコテ尻を検査すると、爪にビリッと感じる時があります。コテ尻の角とともに事前に研いで整えてください。


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