久住氏新連載5

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手作りのチリボーキ

久住 章

■06 チリボーキの使い方





1.チリボーキ用の容器について


チリボーキ用のバケツには7ℓ~10ℓの容量のものを使用する。できれば肉厚のものを選ぶ。木製手桶は金属製バケツに比べて肉厚なので(9㎜~12㎜)、少ない水で間に合い、水の切れがよい。霊園で見かけるような木製手桶は、小さなヒシャクで水をすくうためのものなので、上部の口径が小さい。左官用にはもうひと廻り大きめがよい。

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2.水の量と叩き方

水はバケツ容量の3分~4分入れる(図a)。水は多すぎると重く、少ないとチリボーキの水切れが悪い。チリボーキに含んだ水を下図bの赤ポイントに叩き水を切る。同じポイントに2回叩きでもよいし、ふたつのポイントに1回叩いてもよい。回数にはリズム的な個人差がある。

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※この手桶は桶の高さ20㎝、上端口径25㎝、下端(底)22㎝、柄の長さ20㎝である。







3.壁の各チリ際部位によるチリボーキの使い方

(A)普通の持ち方
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(B) 指を添える型
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4.まとめ

大阪型チリボーキは京都に比べると総じて長めである。毛先に指を添えて使う事は無く、バケツを叩いて水切れをよくする長さが重要であり、掴み位置は上部になる。ところがバケツを叩いて水を切る時の掴み位置のままチリ掃除をすると、毛先が遠すぎて作業性は若干悪いから、水を切った瞬間にシュッと毛先寄りに短く持ち変えるのである。

この様にチリボーキは壁の部位に合わせて常にチリボーキの柄を持ち変えて使うのだが、いちいち頭で考えるものではなく、手が勝手に判断して動くのである。チリボーキを手で持つ位置と掴み方は絶えず移動しているから、掴み込んだまま一定である事はない。

またチリボーキの裏・表両面を常に平均的に使う様に心掛ける。片面のみを使うと、片方に偏ったなぎなた(薙刀)状になる。これは一名“ナギナタボーキ”と言われ、一般的には褒められた状態ではない。しかし、この形状が便利な時もある。
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図dのような、毛先のわりに柄の部分が太く首と尻の太さが同寸のチリボーキは、水の切れが悪くなる。首から尻に向かい徐々に細くすると、頭の部分が重くなり水の切れもよくなる。市販品のチリボーキは上下の太さが同寸のものが多い。


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