久住氏新連載4

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手作りのチリボーキ

久住 章

■03 みご箒



「みご」とは、藁の芯のこと。「わらしべ」ともいう。みご箒の材料は主に、東北から関東地方一円に植生している稲穂の芯や、稲藁の皮(ハカマ)を取り去った上部の茎を使用する。

みご箒はホームセンターなどでも売られている。稲穂の先端部分と稲藁の茎芯を毛先にして銅線で束ねた小さな箒(直径36㎜~40㎜、長さ300㎜~350㎜)である。主に建物や建具の隅々を水洗いしたり掃いたりする道具として使用され、洗い屋さんも使っている。

この使い古されたみご箒をチリボーキに転用する場合もある。普通サイズの壁であれば充分機能する。チリボーキの始まりもこのようなものであったのかも知れない。このみご箒は叩いておらず穂先の繊維は硬いので毛先の水切れはよい。

また市販のみご箒を分解した材料や田畑の稲刈りの穂先を使って、左官用チリボーキを手作りする職人がいる。市販のみご箒は丸型だが、手づくりのみご製チリボーキは楕円形もしくは扁平型に整形される。

下図は京都の左官職、浅原雄三氏の製作のみの箒で楕円形になっている。
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■04 タケ(竹)のチリボーキ

竹製チリボーキは1970年代まで建材店で販売されていた。竹筆の先のように極細に割り繊維を束ねたものである。腰が強いので毛先が薄くても使いやすく水切れもよい。しかし竹を極細に加工する手間が掛かり、結果として原価が高くなり市場から消えてしまった。最近、東京都在住の左官職・小沼充氏が竹の子でチリボーキを作ったと聞くので、後に報告を待ちたいと思う。







■05 パキン製その他のチリボーキ

下図左はパキンの市販品である。植物性繊維原料はリュウゼツラン(サボテンの仲間)。シュロに比べ腰が強く丈夫なので工業的や家庭的に広範に使われている。市販品は全体を太くしてあり毛先を薄くできないので、これを扁平型に加工調整後、時間を掛けて馴染ませる。


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①市販品のパキン製(左)とシュロ製チリボーキ


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②東京の左官職、勝又久治氏手製チリボーキ       



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※写真提供:東京都左官・勝又久治氏のチリボーキ各種を富沢氏撮影(2008.02.24)


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