左官革新の会201103

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「左官革新の会」レポート

富沢建材株式会社 代表取締役社長 冨澤 英一

左官の良い匂いがする江州

平成23年3月27・28日に (さざなみの) と万葉集に歌われた風光明媚な湖国滋賀一近江の国は土と竹の国近江八幡、彦根、多賀に於いて、毎年恒例のビッグイベント「左官有志の会」改め、江州左官の土舟・小林隆男氏が幹事企画する、「左官革新の会」が開催されました。



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■滋賀は優良な竹の産地

sk201103近江商人郷土館.jpgkapukei11.jpgsk201103小林隆男氏.jpgkapukei11.jpgsk201103田邊松司.jpg

27日に全国のカリスマ左官が集結したのは、財団法人・近江商人郷土館です。江戸時代に日本全国で活躍した近江商人・小林家の後世に残る功績を充分に知る事が出来る素晴らしい郷土館です。

挾土秀平氏も到着し、全国からスーパースターが続々と登場です。郷土館1階広間において最初のテーマ、有限会社竹松・田邊松司氏による「竹の話し」の講演が行われました。滋賀県は全国でも他には類を見ない優良な竹の産地です。地元で古くから竹材の各種製品を製造する田邊氏のここでしか聞けない竹への思いを込めたお話を伺いました。



■江州白土の大津壁を体験

sk201103挾土秀平氏.jpgkapukei11.jpgsk201103奥田信夫氏.jpgkapukei11.jpgsk201103小沼充氏.jpg

その後、滋賀県が誇る究極の土、江州白土を使った大津壁の体験会が行われました。江州白の素晴らしさを確認する参加者です。強者が生き生きする一時です。いつでもどこでも、鏝を握ると真剣本気モードの皆さんです。京都・奥田信雄氏、東京・小沼充氏の迫力の鋭い視線と気合いで熱血左官魂が、若い左官職人さんの心と体にびしびしと叩き込まれていきます。



■白土は地層180万年前の地層

sk201103滋賀鉱産.jpgkapukei11.jpgsk201103白土.jpgkapukei11.jpgsk201103西川和也氏.jpg

翌日28日は住友大阪セメント(旧滋賀鉱産㈱)多賀鉱山内にある、180万年前の火山灰、白土の地層を見学しました。これがその気が遠くなるような大昔の白土です。その前に立ち、思わず手を合わせてしまいました。即、狙った獲物に飛びつくがごとく、西川和也氏も少量採取して舐めて土質をチェックします。(注意:許可無く採取は出来ません)



■色土の山に大興奮

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場所は変わって、その近郊にある宝(色土)の山へ向かいます。露出した土肌の美しい色合いにビックリです。車を降りて皆さん一斉に山の上部へ登ります。山全体が正に色土ですね。足下に目を向ければそこも綺麗なピンクや橙色の土です。早速、土を削り取り袋に入れてお持ち帰りです。

久住章氏も手に取り土の良さを確かめます。新潟・宮沢喜市郎氏も白土の粘土質に関心することしきりです。土を採取している姿も絵になる皆さんです。京都・浅原雄三氏も白土の層を見つけて突撃です。植田俊彦氏も白土を見つけました。小沼充氏も土と戯れています。

左官を極める皆さんが、色土を見た時の何かに取り付かれたような滑稽な?(失礼)行動は、その土の魅力を知る者、解る者だから自然と出る仕草なのですね。見ている者まで幸せな豊かな気持になる春の運動会のような出来事でした。原田進氏と山本忠和氏も色土の世界で満面の笑みを浮かべての散策です。ワイルドなご両人、何か収録中の映画のワンシーンのような雰囲気です。



■江州は粋な土処

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あっという間の2日間、江州の魅力たっぷりの土の世界に浸る事が出来ました。小林隆男氏の故郷、氏の左官の技を育んだ地をやっと拝見することが出来て、やはり左官の良い匂いがぷんぷんする粋な土処だなと実感しました。「江州土舟」の世界をもっともっと勉強したくなりました。
そしてこのまる2日間、これだけの強者が揃い誰もが熱く語る左官の物語をたっぷりと聞かせていただきました。止まるところを知らない究極の左官談議、どこまで奥深くどこまで続くのか!そして、何と魅力的なのでしょう。夢中で聞くうちに、左官の可能性は無限大であることをつくづく思い知った2日間でした。



財団法人近江商人郷土館

左官的塾事務局 山口 明


近江商人郷土館は近江商人の標準的な規模の一つとして、小林家の家屋敷を昭和54年、財団法人近江商人郷土館として公開し、古文書・商用具・家具を陳列しました。幕藩制社会から近代日本社会への変革期における商人の商業活動や生活様式の理解と研究の一助となっています。

商家では“質素”と“倹約”が共通の信条で慎ましく暮らし、家族・従業員の教育や教養に留意しました。和漢の古典から当時の実用・読物本にわたる古書籍、書道・謡曲・茶道などの手習いの本や道具類が残されていて、商家の本家(ほんけ)の生活を物語っています。

当主は各地の出店へ定期的に見回りに行くほかは郷里の本家にいて、営業の統括と家政にあたりました。隠居をした後にも、取引先・親類・別家・店員・家族・小作・造作関係の多くの人が絶えず出入りする様子を座敷蔵の窓から把握していたのです。大蔵は、間口12m、奥行5mの総2階造で、嘉永3年(1850)棟上げされ、井伊藩主をお迎えした嘉永5年(1852)に完成したものです。ここには井伊家からの拝領品をはじめ重要な道具や書画骨董類が収納されていました。

sk201103小林邸母屋.jpgkapukei11.jpgsk201103大蔵.jpg
小林邸母屋                 大蔵


■竹(タケ)の話し

タケ類は気候が温暖で湿潤な地域に分布し、アジアの温帯・熱帯地域に多いがササは寒冷地にも自生する。タケ・ササの分布は北は樺太から南はオーストラリアの北部、西はインド亜大陸からヒマラヤ地域、またはアフリカ中部にも及ぶ。北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカの大部分には見られない。タケ類の種は、世界で1100種と言われる。日本には600種があるといわれる(いずれも学説によって異なる)。

主なタケの種類

日本に生育するタケ類のうち、代表的なものを以下に挙げる。
・真竹 Phyllostachys bambusoides
・淡竹 Phyllostachys nigra
・孟宗竹 Phyllostachys heterocycla
・布袋竹 Phyllostachys aurea
・亀甲竹 Phyllostachys heterocycla
・蓬莱竹 Bambusa multiplex
・業平竹 Semiarundinaria fastuosa
・千島笹(根曲竹)Sasa kurilensis
・唐竹 Sinobambusa tootsik
・四方竹 Chimonobambusa quadrangularis
・寒竹 Chimonobambusa marmorea
・矢竹 Pseudosasa japonica
・雌竹 Pleioblastus simonii

真竹は小径の竹はあまりない(12~13cmが多い)が薄く剥ぐことができるので樽のタガに使用している。外見は艶が良く膨らんだ節が二本ある。淡竹は繊維が細く割って使うことが多く茶せん、熊手、笊(ざる)等に使用されている。外見は艶がなく線状の節がある。孟宗竹は中国から来た種であるが筍を食しており、肉厚だが虫が付き易いので団扇の骨・提灯、養殖筏に使用している。外見は節が1本である。

sk201103真竹.jpgkapukei11.jpgsk201103淡竹.jpgkapukei11.jpgsk201103孟宗竹.jpg
真竹                   淡竹                孟宗竹


■タケの特徴

タケ類は木類と異なり形成層がなく導管及び篩管のみのため太くならない。その太さは遺伝により初めから決まっており高さは日の当たり方によって決まっている。その成長力は強く、ピークの時は1日で1m以上成長する。地下茎が地面を広く覆うことからがけ崩れには強いが、逆に強風、地滑り、病気などには弱く、放置された竹林で地滑りの発生が多いという研究もある。また放置竹林によって山地が覆われ、元々植生していた広葉樹や針葉樹の光合成が妨げられ、結果として森林の減少を招くという問題も起こっており、各地で対策が講じられている。

乾燥が十分なされたものは硬さと柔軟さを備えており、さまざまな素材として利用される。竹酢液や竹炭としても利用されるほか、建材、工芸材料などとしても用いられている。

素材としては枝葉を切り落とした主軸は桿(さお。竿とも書く)と呼ばれる。内部が空洞なので、管としての性質を強く持つ。つまり、しなやかでそれなりに強い素材である。しかもそれを構成するのが細長い繊維細胞であり、これも管である。したがって、特に引っ張りには強い。しかし、横からの力には管が壊れる形での破壊が起こりやすい。また、加重を支えるのには向かない。

状況に応じ、そのまま、また、割って細い板状にして使用される。横からつぶしたものはロープのようにも使用される。さらに細い棒状にしたものは竹籤(たけひご)と呼ばれる。繊維が強く丈夫であり、一般の材木と同様に建材として利用される。また、弾力性に富んでいるため、バネ様の素材として利用される場合もある。さらに、細工が容易なので、簡易的な利用にも向く。

伐採したままの青竹、火で焙ったり(乾式)、苛性ソーダで煮沸したり(湿式)して油抜きをした晒し竹、ある程度炭化させた炭化竹(最近需要が増えており乾燥しており強く燻製にして防虫効果があるがコストが2~3倍掛かる)、伐採後数か月から数年間自然に枯らしたもの、家屋の屋根裏で数十年間囲炉裏や竃(かまど)の煙で燻された煤竹(燻製は防虫効果がある)、真空乾燥(力的に無理があるので弱くなっている)、どぶ浸け(防虫剤であるタケゾールに浸す。浸す期間が短いほうが強度的には良いが、効果が少ないので一般的に1日が多い)と、種々の素材が得られる。

これらは弾力性、硬さ、耐久性などが異なり、利用目的によって使い分けられる。 青竹は容易に入手できるが、耐久性に問題があり、晒し竹や炭化竹に加工することでその問題点は改善する。煤竹は独特の色(煤竹色)をしており、硬く、耐久性に富む。


■タケの伐採

伐採の時期により耐久性に違いがあることが知られる。一般的に、3年生が良いといわれている。各年で冬寒くまた夏暑い時の竹は強い。1年生は真筋(根にある竹皮)があり、表面は綺麗である。2年生は真筋がとれかかっている。3年生は真筋がなく、表面は全体が青い、もしくは水垢が付き白っぽくなるものもある。葉変りの跡が残るのでその数を見れば確認できるが、それが落ちると不明となるので、確実な方法として竹の子の時点で印を付けている。

また水を吸い上げている活動期に伐採されたものは耐久期間が短く、9月中旬から翌年の節分期(特に水を吸い上げない正月前後が最良である。逆に暦上の八専(はっせん)は水を吸い上げるので伐採しない。)に伐採された物は耐久期間が長い。現在では温暖化で水分が垂れてくるので根切りでバラけ立てて置く。

この時期以外に伐採すると傷口に虫(トビ)が付き易く、これがタケを弱くする原因となる。青竹を利用するのではなく、いろいろな処置を施す。



東日本大震災についての支援活動

左官革新の会 幹事
江州左官の土舟 小林 隆男


左官革新の会では、東日本大震災についても話し合いが行われました。被災地の左官職人仲間に対する支援活動を行うことを打ち合わせ、早速持ち寄った道具類とカンパ資金を現地に届けることになりました。早速4月2、3日に、小林隆男及び本村謙一氏が被災されました今野様(左官)の元を訪ね皆様の善意を届けてまいりました。
今野様は、この品々を被災された左官業の皆さんに見せ、廃業する気になどならぬ様勇気付けると言っておられました。
現地を見る事で、我々左官が一丸となり何かをしなければと痛感してまいりました。 その為にも、募金、知恵等を募り、何をするのか、何ができるのかを考え、備えていかなければならないと思います。(例えば、土蔵の被害も多く目にしましたが、ちゃんとした形での修復など)
募金の為の、口座(個人名義)を開きましたので、どうかご理解ご協力をお願い致します。

●ゆうちょ銀行
記号14600  番号8092761

●他金融からの場合
店名四六八(ヨンロクハチ) 店番号468
普通預金 口座番号0809276

申し訳ありませんが、振込手数料は皆様方でご負担お願いいたします。
また、報告や意見交換の場としてブログを立ち上げましたので、ご意見などお寄せ下さい。

ホームページアドレス http://sakan.exblog.jp/
タイトルは、左官革新の会です。

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