木舞講習会報告
平成20年2月3日(日)と24日(日)の2日間、東京都立城東職業能力開発センター・足立校(以下足立校)において、東京都左官職組合連合会主催で木舞講習会を開催しました。
目的
東京都左官職組合連合会の活動は、①経営労働条件の維持改善及び経済的地位の向上、②団体協約の締結、③技能向上と能率の増進、④失業対策、⑤会員及びその家族の相互扶助並びに福利厚生等、多岐にわたります。
このうち、技能向上と能率の増進の一環として、左官伝統工法の習熟を目指しています。多くの伝統工法が失われつつあり、それらは過去のものと思われがちですが、興味深い技法や工法があり、現在でも充分適用でき、かつ通用するものです。これら伝統工法を紐解くことにより、さらに新たな可能性へと発展させることができるでしょう。
今回は、左官伝統工法のうち「木舞工法」を学び、習得するために、企画したものです。2日間にわたる講習会では、木舞を編む手順、方法及び材料を学ぶことで、いつでも資料を見れば自分で施工できるレベルまで覚えてもらうことを目指しました。
準備
・会場の準備と木構造の基礎づくり
昨年から、会場を借用する足立校の山崎佳子係長及び横山伸吾先生に、会場の設定、材料の調達、講習会の日程、予算等、いろいろと相談に乗っていただきました。また木構造の設計、木舞竹の確認等を行い、今年に入り、講師間の打ち合わせ、講習会の納入材料の確認等を行い、最終的な準備として、2月1日に足立校を訪問し、木構造の基礎を施工しました。
・静的せん断試験への対応
今回の講習会では、地震や荷重に耐えうる木構造にすることを目標としました。そのためには、「静的せん断試験」による評価を受ける必要があります。この試験は、梁に取り付けた油圧ジャッキで押し引きし、変形角を暫時増加させ、破壊されるまでの数値を測定するものです。この「静的せん断試験」について、多くの方に協力していただきました。
日本左官業組合連合会の鈴木光理事から紹介を受け、横浜国立大学大学院 工学研究院 建築学教室・中尾方人特別研究教員から、土塗り壁の耐震性能評価法について教えていただきました。「静的せん断試験」を受けられる構造に関するアドバイスも受けました。具体的には、試験体の基本である梁の太さ、貫の位置、木構造の固定等についてです。その際、試験装置と同建築学教室での試験データを見せていただきました。
さらに、試験装置の確認のため、足立校の横山伸吾先生から紹介を受け、財団法人建材試験センター 中央試験所 品質性能部・高橋仁構造グループ上級職員にお会いし、「静的せん断試験」の意義、壁倍率データ、予算等のアドバイスをいただきました。
今回の講習会で製作した木舞は「静的せん断試験」が可能であり、予算が確定した時点で試験を実施します。
・木構造の選定
木構造については、2つの方法を採りました(下記講習会内容参照)。
(以下の写真は全てクリックすると大きくなります)
(写真左:告示方式、写真右: 輪島方式)
講習会内容
資料を用意し、実技中心の講習会を行いました。講師は久住章さん、上野詔弐さん及び斉藤剛史さんです。木舞は2つの方法を採用しました。建築基準法告示に基づく方法(財団法人日本住宅・木材技術センター発行「土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書」参照)と、久住章さんが輪島で土蔵の復旧時に実践した輪島の方法(建築技術2002.02「土蔵の耐震改修/輪島」参照)です。
(写真左の2枚:告示方式の木舞、写真右の2枚:輪島方式の木舞)
2月3日には雪の中、約35人が参加。木構造を組み立て、木舞の段取りをしました。
(写真3枚:木構造の柱・梁・貫の組み立て)
(写真2枚:木舞竹の用意)
2月24日は約45人が参加。木舞を編み、編み終わった時点で木舞を編んだ木構造を基礎に設置しました。
(写真左:編んだ木舞、写真右:木構造の設置)
昼休み後には、久住さんが施工した壁について、スライドで説明がありました。
(写真:スライドを使った久住氏の説明を聞く参加者)
2日間の講習会を終えて
受講者としては、5〜20年程度の経験のある左官職人を想定していましたが、参加者は左官、設計、建材と多士済々。木舞に対する関心が高いことがわかりました。また参加した若い人達は木舞を見たことがなく、当然木舞を編んだこともないことから、新しい知識を注入できたと考えています。
今回の木舞を使い、荒壁塗り・中塗りの講習会を7月に行う予定です。また募集しますので、是非参加をお願いします。
(記:東京都左官職組合連合会 木舞講習会 担当・山口 明)