日本左官会議報告
編集室
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2008年2月16日、大分県日田市で日本左官会議が開催された。出席者は花咲か団OBを中心に北は関東、南は九州までの左官職人に加えて左官を応援する人たち、総勢50余名。
(議長団:写真左から久住章氏、原田進氏、阿嶋一浩氏、挾土秀平氏、荒木富士夫氏、小林澄夫氏、木村謙一氏)
司会進行役は美術家の木村謙一氏。主催の原田進氏から開会挨拶。続いて、阿嶋一浩氏(東京都/平成会会長)、久住章氏(京都府/左官職人)、小林澄夫氏(東京都/月刊さかん編集長)、挟土秀平氏(岐阜県/左官職人)、原田進氏(大分県/左官職人)、荒木富士男氏(福岡県/左官職人)から、各自取り組んでいることについて次のように発表があった。
(以下敬称略)
阿嶋:平成会の紹介をする。元々会員は60人くらいだったが、現在は倍の人数。それだけ勉強がしたいという人がいる証拠。全国的に会員が増えたきっかけは小沼充氏の青松寺磨きと新宿のOZONEでの「土の王宮をつくる」展だった。
久住:まずは最初の弟子、植田俊彦氏と最後の弟子、白石博一氏を紹介。
次に、左官的塾の紹介を。小林さんを中心に「左官教室」を継ぐものを出そうということで、つなぎで「左官的塾web」というHPをやっていた。この度「月刊さかん」が小林さんを編集長として創刊されることになり、左官的塾としては支援し続ける。並行して、左官的塾webをやっていく。「さかん」と左官的塾webは違う役割を持つ。
左官的塾は全国的に技術を公開して、活動を普及させていくのが狙い。webでは技術論や道具について、文章化して公開。それ以外に講演会、講習会を開催し、技術の継承を続けていく活動を行う。会員には、運動を起こすことに協力してほしい、一緒にやってほしい。社会に対して提案する運動を続けていきたい。
3月29日には講演会を開催し、チリ箒についての小冊子を販売する予定。ほかには、漆喰磨きや大津磨きなど、専門的な技術論の書かれた本を出す予定。浅原さんのやって来た左官サンプルについても本として出すなど、社会に対して提案し、幅広くやっていきたい。
ほかの個人的な目標は篠山でのバンブーハウスの実験、石灰の技術開発。後者については、石灰を再生利用できるようにすることが目的。漆喰はCO2を吸収する特徴があり、その上1000年ももつ。そういう優秀な素材を消費だけでなく、回収して再生利用できるように、大学の研究者らと一緒に技術開発し可能性を探りたい。
小林:昨年9月左官教室が会社の都合で突然休刊となり、晴れて自由の身になったとのんびりしていたら、左官教室で40年近く付き合って来た左官業界の方々が、左官メディアの灯を消してはならないと、いろいろと新しい雑誌の発行に動いてくれた。
ここへ来て東京の株式会社コーパスというクリエイティブ・エージェンシーが発行元を引き受けてくれることになり、月刊「さかん」という名の雑誌を出すことになった。内容は塗り壁の文化誌として、できるだけ左官塗り壁の良さと土を意識する生活者の声を外へ発信していくつもりである。もちろん左官あっての月刊「さかん」なので、できるだけ多くの方々の購読をお願いしたい。
挟土:「左官教室」で紹介されていた花咲か団の記事を見て、どれほど憧れたかわからない。それ以来、自分流に仕事を覚えてきた。
一方、左官工事は激減している。左官工事自体はいいと悪いの両極端に進んでいる。塗り壁のよさは火災から命を守ることだけではなく、1番目「環境にいい、地球のためにいい」、2番目「心にいい(人の気持ち)」、3番目「火災から命を守る」。そういう言い方をしてイメージを作り、時代を引っ張っていくことが大事。
既調合の材料としては例えばサイディングのものとしては、樹脂系のものも出ているけれど、中にはいいものも悪いものもある。悪いものを減らすには、意識を変えていくことが必要で、最低のところのレベルを上げていけばいい。
土壁がウケているが、適材適所、つまり場所によって壁の材料を選んでいかなければかえってマイナス。用途に合うようにメリハリをつけて、左官の材料を選ぶことが必要。そのために、使う素材と色の勉強をしている。
今後は石灰がポイント。粗い石灰、生石灰、ノリなどを使って実験している。とにかく左官はでかい知識の職種だと知らせるため、左官の枠を広げるためにやっていくつもり。
原田:久住親方に代わって、ドイツのアーヘンという場所にある大学で生徒に教える仕事を7年以上続けている。その様子をスクリーンで紹介する。
内容は大学のサマーセミナーで学生が1棟ずつ作るもの。ひと夏で1~2坪の建物が5~6棟建つ。機械は使わず何でも手でやる。使う道具は日干しレンガを作る道具、ドイツの鏝と日本の鏝。
敷地内の土をほじくり出して壁を塗る。スサは麦の穂で、鉈で切る。生石灰をバスタブに入れて消化。紙スサも入れたりしている。黄色い壁にする場合は、黄色い土がないので顔料を入れている。さび壁は鉄粉を入れている。磨きもやっている。
1週間くらいかけて、3000~5000個の日干しレンガでドームも作った。
荒木:大正時代に作られた築90年以上の洋館の修復工事をスクリーンの画像とともに紹介する。建物は近年使われていなかったもので、北九州市が買い取ったもの。建てられたのは左官の華の時代で、昔の左官職人と対話ができると思い、引き受けた。
まずは柱を取り壊すので1本作ってくれと言われ、作ってみた。蛇腹の型と外し型を使った。カサギは漆喰で仕上げている。丸い部分は風船を膨らませて石膏に入れ、その型に漆喰を流し込んで作った。
梁下の蛇腹が大変だった。定木をあてがう方法と、宙で引く方法の両方できないと対応できなかった。
細かいところは筆洗い。洗い出しには噴霧器は使わず、刷毛洗いのみ。この刷毛も難しく、人造の刷毛を作ったもらったが、一つ間違うと汚くなる。うっすらとノロを残すには、毛の長さと密度が重要。
外部の仕上げは8人で4カ月かかった。