つないでつないでつなぎまくる
遠野未来
2008. 6/28-29に、盛況のうちにおこなわれた森と風のがっこうエコキャビン 第2回ワークショップのご報告。今回は一日参加も可としたことで、家族連れを中心に20人以上の参加があり、特にこどもたちに土に触れさせたいというご両親が多く、にぎやかで楽しいワークショップとなった。
1 土づくり
今回の土壁には、ご指導いただいている葛巻の四日市左官さんの紹介で、町内の山の土を使うことにした。粘性はなかなかあるものの、石や有機物も混ざっているというなかなか使いづらい土。今回は15mmほどの鉄の網フェンスを作り、漉してて使うことに。
なかなかの労作業・・・でも足でこね始めると、こどもたちも混じって大はしゃぎのお祭り騒ぎ。土作りのこの作業はいつやっても連帯感が生まれ、楽しい。
出来た土に藁を約半分混ぜる。本当は藁はほぼ同量必要なのだか、足で混ぜている作業性上、半分にして約1ヶ月発酵させ、使う直前に再度混ぜるることに。土と藁を混ぜ発酵させることで、土の中に納豆菌が生まれ、それが出来た土壁の調湿作用をもたらす。
2 小舞づくり
出来た土を塗る小舞づくり。今回の楽しみの一つだったこの地方独自の小舞のつくりかたを、四日市左官の下四日市栄造さんから教わる。
通常小舞といえば竹であるが、寒いこの地方には竹がないため、葦と木を使う。さらに葦をとめるのはマダという、木の皮。戦後は省力化のため、小舞を細い藁縄で掻いていたが、今回それを扱っている業者も見つからず、50年以上前のやり方、マダで葦小舞をつくることにした。マダの木から皮をはぐ作業は、地元農家の幸助さんに教わる。生木から皮がすっとむける様子に、みんな感嘆の声を上げる。
その皮を使い、貫の入れられた壁に葦を2本ずつたばねて、小舞をつくっていく。
マダの皮で葦が動かないように、表裏2人一組で作業を半日行う。
いつも思うのは、この作業は女性のほうが得意そうなこと。編み物の感覚ですいすい編んでしまう、お母さんが何人もいらした。
作業の合間に、ご指導いただいた下四日市栄造のお話をうかがう。下四日市さんは50年以上前に、この学校の壁を塗られた方。70を過ぎ、第一線は退いてはいるものの、まだまだお元気。昔の左官のお話、ここの学校をつくったときの様子など、尽きぬお話をいただいた。下四日市さんですら、今回小舞と土壁は何十年ぶりかになるという。
3 土壁塗り
2日目。いよいよ待ちに待った土壁塗り。みんなで土を塗り、最後は左官さんに仕上げていただいた。
一つの壁を作るのに、土と藁を混ぜる人、土を運ぶ人、手渡す人、塗る人、仕上げる人。・・・たくさんの人が必要なことがわかる。みんなの思いと息遣いが壁に伝わって、塗りこまれてゆく。みんなの気が土に伝わる・・・一番盛り上がる瞬間。
4 座学と食事
この森と風のがっこうでは、単に「ああたのしかった」というワークショップではなく、なぜそのようなことをするのかきちんとみんなで考える、というのをモットーにしている。今回の夜は私が講義を行い、土の建築と今回の作業の意味合いを写真を交え説明させていただいた。その後、エコキャビンに関するディスカッションがあり、議論白熱・・・終わるのがもったいなかった。
みんなここを特別な場にするには・・・といろんな案を出してくれた。単なる宿泊施設ではなく、何かをしないと泊まれない場・・・たとえば自転車を100回こいで電気をつける?薪を何本割る・・・? 楽しく自然エネルギーを感じるそういうソフトも大事となる。
そして何より、ワークショップの最大の楽しみはみんなで食べる食事!
みんなが家族になったよう。こどもたちがいると、ただそれだけで楽しい。
みんなで今回つくった土レンガは、今後新しくつくる壁の中に組み込む。
5 まとめ
今回全て葛巻の素材で土壁をつくることができた。それも昨日までそこにあった土だったり、葦だったり、木の皮だったり・・・それをみんなでつないで、混ぜて、一つの壁が出来上がる・・・ワークショップ終了後の感想で多かったのが、楽しかったと共に、土壁をつくるのはこんな大変だったんだ・・・という感想。
いつも土壁を作ると、みんなで力を合わせてつくることの素晴らしさを感じる。
ワークショップを行い、何とかこういう人のネットワーク「結い」を残していきたいものだ。最後に今回心に残った言葉を二つ。
森風事務局長の黍原(きびはら)さん・・・(「なぜこどもなのか?」の問に)、「こどもが参加すると、こちらの心が開いてくるから。」
森風代表理事の吉成信夫さん・・・・「ここでは全てを、つないでつないでつなぎまくる。そうやって生きてゆく・・・」
その二つの言葉を胸に刻み、自分も秋までエコキャビンづくりを駆け抜けたい。
次回ワークショップは8/23,24に盛大に土壁塗りを行う予定。今回来れなかった皆さん、是非参加してください。全国からの人々との出会い、そして絶対何かを得ること間違い無し。お楽しみに!