増田氏連載2

左官的塾 web

塗り壁の文化を伝える

| HOME | 連載一覧 | 増田氏連載2 |

滋賀県信楽の木節粘土・蛙目粘土、三重県の蛇紋岩

岐阜県各務原市の左官 増田 修


5月中旬、滋賀県の信楽を中心として、各鉱山を訪ねに行きました。
はじめに信楽の駅から東へ約7kmのところにある、三郷山鉱山(甲賀市信楽町神山)です。ここは信楽陶器工業組合所有の鉱山で信楽焼きの原料山です。陶土に用いるのは「木節粘土(きぶしねんど)」「蛙目粘土(がいろめねんど)」「実土粘土(みづちねんど)」(実土は蛙目に比べ少し緑がかった色をしている)などです。途中の道路は県道50号線です。舗装はしてあるもののせまい道筋で、遅咲きの山ツツジが美しくまた鶯が鳴いていて気分のよいものでした。この鉱山からさらに東へ約5kmのところに根組原鉱山があります。ここでは蛙目粘土が採掘されていました。また三郷山鉱山から西へ約4km戻ったところに山本産業(同じ神山地内)があります。ここでは長石を採掘しています。これ以外にも信楽町には数ヶ所の長石鉱山があります。

長石は石英や雲母と一緒に岩石を造る代表的な鉱物で、一般的に「ペグマイト」という岩石の中に産出され、そのほかに「アプライト」があります。
外観は花崗岩で長石と石英が同じような割合で混じり合ったのが特徴で、風化した花崗岩がサバ状になり長石や石英が粗粒になった岩石を半花崗岩、または風化花崗岩と称しアプライト質部分を採掘します。

アプライトは一般に陶磁器の素地、釉薬(ゆうやく)、タイル、ガラス原料として利用されています。長石の外観は白色、クリーム色、淡紅色が多く、その粉末はゴム、ペイント、プラスチックの充填材(じゅうてんざい)への用途があり、見ため以上に壁土として具合がよいです。

同時期に三重県の蛇紋岩採掘地を訪ねました。
蛇紋岩は濃い緑色に白色のまだら模様が入った外観が蛇皮のように見えるのでこの名が付きました。硬度は2.5~4度と軟らかく、通常は少量のクロム、ニッケル、鉄分などを含んでいます。蛇紋岩は産状により塊状、葉片状、粘土状に分類できます。葉片状のものは片状にはく離しますので、指で押して崩れるようであれば壁材料となり、粘土状のものは壁土として使いやすいでしょう。また産地によって色の濃淡があります。三重県の各地では良質の中塗り土として生産されています。

蛇紋岩の主な用途は外観の模様が美しいことから建築用装飾石材として用いられています。また工業用としては燐酸質肥料の原料の1種になります。さらに高炉や焼結炉の操入原料として使われています。


(以下画像はクリックすると大きくなります)

masuda_01三郷山鉱山.jpg
1.三郷山鉱山

masuda_02根組原鉱山.jpg
2.根組原鉱山

masuda_03山本産業長石鉱山.jpg
3.山本産業 長石鉱山

masuda_04山本産業プラント.jpg
4.山本産業 プラント

masuda_05三光鉱山伊勢市島ヶ原.jpg
5.三光鉱山 伊勢市島ヶ原 蛙目・木節・実土の各粘土

masuda_06三光鉱山実土粘土.jpg
6.三光鉱山 実土粘土

masuda_07福本商店.jpg
7.福本商店 奈良県添上郡月ヶ瀬村石打 木節粘土

masuda_08高嶋鉱業所.jpg
8.高嶋鉱業所 奈良県添上郡月ヶ瀬村石打 木節粘土

masuda_09鳥羽市松尾.jpg
9.鳥羽市松尾 蛇紋岩 風化粘土が少し露出しています

masuda_10鳥羽市白木字向山.jpg
10.鳥羽市白木字向山 蛇紋岩 丸又鉱業kk

masuda_11二見町.jpg
11.二見町 夫婦岩 大岩とその左の岩 緑色片岩

masuda_12二見町夫婦岩露頭.jpg
12.二見町 夫婦岩の通路にある緑色片岩の露頭

連載一覧へ戻るLinkIcon