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カリスマがデザイン 篠山に左官ミュージアム

出典:神戸新聞(2009年6月)


ゆめのはこ.jpg

後継者育成を目的に、左官の技術が詰まった博物館「左官ミュージアムゆめのはこ」が、篠山市小枕に完成した。世界的に活躍する淡路市出身の“カリスマ左官”久住章さん(61)がデザインし、ベテランも若手も伝統技法を駆使して造り上げた建物は、柔らかな曲線が特徴。館内ではヨーロッパなども含めた多様な技法をパネルで紹介する計画で、失われつつある左官の技継承の拠点とする。(上田勇紀)

発案は、左官歴約40年になる近くの南俊行さん(58)。「建物が均一化し、技術を磨く機会が激減した。あと数年で伝来の技が失われるのでは」と危機感を募らせた。3年前から久住さんらを講師に迎え、古民家の改修現場などで全国の若手を対象に講習会を開催。だが、自由に壁を塗ることができる場所が少なく、「ならば自分で造ろう」と考えた。

共感した久住さんがデザインしたのは、18世紀のヨーロッパの宮殿造りを参考にした2階建ての木造建築。昨年9月から取りかかった。丸太約60本で骨組みを作り、セメントや砂を独自の配合で混ぜ合わせ、下塗りをしては乾かすこと4回。仕上げには、県内各地の若手ら約30人に参加を呼びかけた。

外壁はくぎを並べた道具「かきおとし」で引っかいて模様付け。内壁はコテでむらを消す「なでもの」や、押し固める「押さえもの」の一種で磨いて光沢を出す「磨き」など、6種類の技法が凝縮されている。土間には緑の顔料を混ぜて花をイメージした文様をあしらった。

直線的な日本建築を覆す設計に、「左官の可能性を広げる建物として提案したかった」と久住さん。参加した西脇市の吉川司さん(36)は「普段使わない技法や発想に触れられる貴重な機会。将来に生かしたい」と目を輝かせる。

今後も定期的に壁を塗り直し、技を磨く場とするほか、内外のさまざまな技法を用いた壁や家紋のサンプルを製作し、専門書とともに館内に展示する。


<写真>左官の技が凝縮された高さ7メートルの「左官ミュージアムゆめのはこ」=篠山市小枕

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