塗り壁隊奮闘記
塗り壁隊、アトリエへん代表 片山 暁
塗り壁隊は2000年春発足以来、80回余り土壁を塗る作業を行なってきた、しろうとの左官集団です。
現代社会のなかでの土壁のとらえかた、作業を通しての塗り壁隊の活動内容などをお話したいと思います。
隊員は全員がしろうとで、サラリーマン、自営業、OL、学生、先生、職人、子供と実にさまざま、年令も80代から10代までです。
塗り壁隊で塗る土壁は土しっくいと名づけたもののみです。材料は山の赤土と砂と生石灰、それにわらを混ぜたものです。生石灰を加えて水で練って混ぜながら沸化させ十分に反応が終わったらコテで塗っていきます。生石灰の効果、働きで土としっくいの中間のようなものができ、バサバサした土にしっくいの粘りが加わって、しろうとでも塗れます。2回塗り重ね、最後に押さえて仕上げます。作業が土日の2日間でこの行程、日曜の1日のみの時は短縮して行います。
けっこうおっつけ仕事ですが、できるだけ土日の2日間の作業にしています。塗り厚さは2回塗りで約15ミリ、下地はコンクリートブロック、コンクリート、モルタルなどです、木造の場合はラスモルタルくし荒らし下地にしています。
作業は原則、土壁にこだわる人がどうしても土壁を自力で塗りたいがどうしていいか分からないという場合に自力工事のサポートを塗り壁隊が行うということです。オーナーは自ら作業をするのは当然のこととして、準備の他、昼食の世話や作業後の軽い打ち上げの用意もしなければいけません。作業の費用も実費+αを支払います。
共同作業は楽しいもので作業後に自分達で塗った土壁が残されるわけですから楽しさは持続します。作業前に小1時間かけて段取り説明をします、毎回同じことの繰返しですが初参加者も多いのでこれはかかせません。
しろうとばかり、開始直後は作業もままならずオーナーは真っ青ということもしょっちゅうです。それでもお昼を過ぎると慣れてきて声も出始め、なんとか土壁は塗られていきます。
塗り壁隊は今年で13年目になります、作業のパワーをバネに続けてきました。塗った場所は関東、長野が主ですが西は京都綾部、岐阜美濃、東は福島飯館村まで、沖縄名護、インドムンバイにも2回遠征しました。インドの赤土は紅色、名護も真っ赤、京都綾部は赤黄色、今年塗ったいすみ市はたんぼの土で灰色でした。
隊員には左官屋さんのまねはしない様、できっこないのだからといっています。それでも試行錯誤でいろんな失敗を重ね、少しだけわかったこともあります。ばかの1つ覚えのように土しっくいを塗ってきましたがこれからも土しっくいだけを塗っていきます。
全国どこでも頼み手がいれば出かけていき、現地の人たちと共同作業で土壁を塗っていきたいと考えています。
■片山暁のプロフィール
建築家 塗り壁隊、アトリエへん代表
1949 山口県徳山市 生まれ
1978 広島大学工学部建築学科卒業
1984 東孝光建築研究所入所
1987 アトリエへん 開設
2000 塗り壁隊 発足
■ミニ知識
HP『塗り壁隊』より
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/atelier-hen/index.html
土しっくい壁を塗るときに使用する
生石灰20kg(1袋)は
15kgの炭酸ガスを吸収する。
50年杉1本が1年かけて吸収する量に相当する。
CaO+H2O=Ca(OH)2
Ca(OH)2+CO2=CaCO3+H2O